急行「はまなす」|青森~札幌を結んだ夜行急行の歴史【1988年~2016年】

DD51-1083急行はまなす

DD51-1083急行はまなす

急行「はまなす」|青森~札幌を結んだ夜行急行の歴史【1988年~2016年】

1.青函トンネル開業で誕生した夜行急行「はまなす」

急行「はまなす」は、1988年3月13日の青函トンネル開業に合わせて、青森~札幌間に設定された夜行急行列車である。

青函トンネル開業によって、それまで青森と函館を結んでいた青函連絡船はその役割を終え、本州と北海道を鉄道で直結する津軽海峡線が開業した。

この新しい鉄道ルートを利用して、北海道と本州を夜間に結ぶ列車として登場したのが「はまなす」であった。JR北海道とJR東日本の両社にまたがって運転され、青森と札幌を1日1往復で結んだ。

JR北海道によれば、青函トンネル開業後は「北斗星」「カシオペア」「スーパー白鳥」などとともに、「はまなす」も北海道と本州を結ぶ重要な列車として運転された。

「はまなす」という愛称は一般公募によって決定された。北海道を代表する花であるハマナスにちなんだ名称で、北海道を発着する夜行列車にふさわしい愛称となった。

2.青函トンネル開業当初は座席車だけの編成

登場当初の「はまなす」は、14系客車による座席車のみの5両編成で運転された。

現在では「夜行列車=寝台車」というイメージが強いが、「はまなす」はあくまで急行列車であり、座席車を主体としていたことが大きな特徴である。

青函トンネル開業当時、本州と北海道を結ぶ夜行列車には寝台特急「北斗星」も設定された。一方、「はまなす」は比較的安価に利用できる夜行列車として、旅行客だけでなく学生やビジネス客など幅広い利用者に利用された。

青函トンネルを通過して北海道と本州を結ぶ夜行列車という点では「北斗星」などと共通していたが、急行列車として座席車を主体とした「はまなす」は独自の役割を担っていた。

1991年3月16日ダイヤ改正現在夜行急行はまなす編成表
夜行急行はまなす 青森~札幌 14系座席 所属 札幌
←青森 札幌→
1 2 3 4 5 6
スハフ14 オハ14 オハ14 オハ14 オハ14 スハフ14
指定 指定 指定 自由 自由 自由
※1 青森~函館間逆編成
※2 青森~函館間はED79、函館~札幌間はDD51が牽引

3.1991年にB寝台車を連結

「はまなす」の大きな転機となったのが、1991年7月のB寝台車連結開始である。

これによって「はまなす」は、座席車だけでなく寝台車も利用できる夜行列車となった。

ただし、寝台特急のように寝台車を主体とする列車ではなく、基本的には座席車が主体で、その中にB寝台車を組み込むという構成であった。

このスタイルは「はまなす」の最後まで引き継がれ、晩年の編成でも座席車と寝台車が混結されていた。

4.「まりも」から受け継いだドリームカー

1993年3月には、札幌~釧路間の夜行急行「まりも」の特急格上げに伴い、「まりも」で使用されていたリクライニングシート車が「はまなす」に転用された。

これが「ドリームカー」である。

ドリームカーは通常の14系座席車よりもゆったりしたリクライニングシートを備えた指定席車で、夜行列車で長時間移動する利用者にとって大きな魅力となった。

普通車指定席でありながら、通常の座席車とは一線を画した設備を持っていたことから、「はまなす」を代表する車両の一つとなった。

5.1997年にはカーペットカーを連結

さらに1997年3月からは、カーペット敷きの「カーペットカー」の連結が始まった。

カーペットカーは通常の座席車とは異なり、カーペット敷きのスペースで横になって休むことができる設備を備えていた。

夜行列車でありながら、寝台車よりも安価に横になって移動できる選択肢として人気を集めた。

この結果、晩年の「はまなす」は、

  • 一般座席車
  • ドリームカー
  • カーペットカー
  • B寝台車

という異なる設備を一つの編成に組み込んだ、非常に個性的な夜行列車となった。

6.晩年の「はまなす」は14系・24系の混結編成

晩年の「はまなす」は、14系客車を基本としながら、B寝台車には24系客車を使用していた。

通常期の基本編成は7両で、

B寝台車+B寝台車+カーペットカー+ドリームカー+ドリームカー+一般座席車+一般座席車

という構成となっていた。

代表的な編成では、スハネフ14形550番台、24系B寝台車、スハフ14形550番台、オハ14形500番台などが連結されていた。

14系と24系では車体断面や屋根の高さが異なるため、両形式を連結した「はまなす」の編成は外観上も特徴的であった。

また、繁忙期には座席車や寝台車を増結し、最長で12両編成となることもあった。増結時にはDD51形ディーゼル機関車の重連によって牽引される姿も見られた。

7.青函トンネルではED79形、北海道内ではDD51形が牽引

ED79-13急行はまなす

ED79-13急行はまなす

「はまなす」は青森~札幌間を直通する列車だったが、全区間を同じ機関車が牽引したわけではない。

青森~函館間の津軽海峡線では、青函トンネルを通過するため電気機関車のED79形が使用された。

一方、函館~札幌間は非電化区間だったため、DD51形ディーゼル機関車が牽引した。

つまり函館駅では、青森から函館まで牽引してきたED79形から、札幌まで牽引するDD51形へ機関車を交換していた。

この機関車交換も「はまなす」の旅の一部であり、客車列車ならではの特徴であった。

最終列車では青森~函館間をED79形重連、函館~札幌間をDD51形重連が牽引した。

8.「はまなす」は北海道と本州を結ぶ重要な夜行列車だった

「はまなす」の役割は、単なる観光用夜行列車ではなかった。

青森~札幌間を夜間に移動できるため、北海道と本州を安価に移動する手段として利用価値が高かった。

また、札幌発の下り列車は道南方面への夜間移動にも利用され、北海道内の都市間移動を担う役割も持っていた。

新幹線や航空機が現在ほど身近ではなかった時代には、夜行列車で移動することそのものに大きな意味があった。

特に「はまなす」は寝台特急よりも低い料金で利用でき、自由席も設定されていたため、幅広い利用者が利用できる夜行列車だった。

2008年3月15日ダイヤ改正現在夜行急行はまなす編成表
夜行急行はまなす 青森~札幌 24系寝台+14系座席 所属 札幌
←青森 札幌→  
1 2 3 4 5 6 7  
オハネフ25 オハネ25 スハフ14 オハ14 オハ14 オハ14 スハフ14
B★★★ B★★★ 自由 指定 指定 指定 自由
※1 4号車はカーペットカー
※2 5・6号車にドリームカー
※3 2・4・5号車の一部は女性専用席
※4 青森~函館間逆編成
※5 青森~函館間はED79、函館~札幌間はDD51が牽引

9.夜行列車の衰退の中でも生き残った「はまなす」

2000年代に入ると、夜行列車を取り巻く環境は大きく変化した。

航空機の低価格化、高速道路網の整備、新幹線・特急列車の高速化などによって、夜行列車の利用者は徐々に減少していった。

JR各社でも夜行列車の廃止が相次ぎ、「はまなす」と同じような客車夜行は次々と姿を消していった。

それでも「はまなす」は運転を続けた。

その背景には、青函トンネルを越えて本州と北海道を結ぶ夜行列車として、一定の需要が存在していたことがある。

寝台車だけではなく、自由席・指定席・ドリームカー・カーペットカー・B寝台という多様な設備を用意したことも、「はまなす」が長く生き残った理由の一つだったと考えられる。

10.「きたぐに」廃止でJR最後の定期夜行急行に

「はまなす」の歴史を語るうえで大きな転換点となったのが、2012年3月のダイヤ改正である。

大阪~新潟間を結んでいた急行「きたぐに」が定期運転を終了したことで、「はまなす」はJR線に残る最後の定期夜行急行列車となった。

その後、急行列車そのものが減少していく中で、「はまなす」はJR最後の定期急行列車という非常に貴重な存在になった。

11.「北斗星」廃止後は最後の客車定期優等列車に

さらに2015年3月には、上野~札幌間を結んでいた寝台特急「北斗星」の定期運転が終了した。

これにより「はまなす」は、JRで最後に残った客車による定期優等列車となった。

その後も「トワイライトエクスプレス」「カシオペア」など、北海道と本州を結んできた夜行列車が相次いで運転を終了する中、「はまなす」は最後まで青函トンネルを越える定期夜行列車として残った。

2012年以降は「JR最後の定期夜行急行」、2015年以降は「JR最後の客車定期優等列車」という二つの大きな肩書を持つ列車となったのである。

12.北海道新幹線開業で廃止へ

しかし、「はまなす」の運命を決定づけたのが北海道新幹線の開業であった。

2016年3月26日、北海道新幹線新青森~新函館北斗間が開業することになり、青函トンネルを含む区間では新幹線と在来線貨物列車などが共存することになった。

これに伴って青函トンネルを含む区間の運転条件が変更され、「はまなす」は北海道新幹線開業前に廃止されることになった。

「はまなす」は2016年3月20日札幌発の上り列車、3月21日青森発の下り列車を最後に運転を終了した。

1988年3月の運転開始から28年間にわたる歴史であった。

最終列車では、青森~函館間をED79形13号機+14号機、函館~札幌間をDD51形1093号機+1140号機が重連で牽引した。

2016年3月22日朝、最後の「はまなす」が札幌駅に到着。

これによって、JR線から定期急行列車が完全に消滅した。

13.「はまなす」が残したもの

「はまなす」は、青函トンネル開業とともに生まれた列車だった。

そして28年後、北海道新幹線開業によって青函トンネルを取り巻く鉄道輸送の環境が大きく変化するとともに、その役割を終えた。

「はまなす」の歴史を振り返ると、1988年の登場時には新しい時代の象徴だった青函トンネルが、2016年には北海道新幹線というさらに新しい輸送体系へ移行する舞台となっている。

その間、「はまなす」は14系・24系客車、ED79形、DD51形という国鉄時代から受け継がれた車両によって運転され続けた。

特に晩年には、

  • JR最後の定期急行
  • JR最後の定期夜行急行
  • JR最後の客車定期優等列車
  • JR最後の定期客車夜行列車

という数々の「最後」の称号を持つ列車となった。

夜行列車が次々と姿を消していく中でも、「はまなす」は座席車、寝台車、ドリームカー、カーペットカーという多様な設備を組み合わせることで、夜行移動そのものの価値を最後まで提供し続けた。

青函トンネル開業によって始まった「はまなす」の歴史は、北海道新幹線の開業によって幕を閉じた。

それは同時に、国鉄時代から続いてきた「急行」という列車種別と、定期客車夜行列車という一つの時代が終わった瞬間でもあった。

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