1.「きたぐに」誕生まで ~急行「日本海」から始まる歴史~
夜行急行「きたぐに」のルーツは、1947年7月5日に運転を開始した大阪~青森間の急行507・508列車にまでさかのぼる。
1950年11月8日、この列車は「日本海」と命名され、日本海縦貫線を代表する夜行急行として活躍した。
一方、1961年には大阪~富山間に準急「つるぎ」が登場し、その後急行・寝台列車へ発展するなど、関西と北陸を結ぶ夜行列車網が充実していく。
1965年のダイヤ改正では列車名の整理が行われ、「つるぎ」「金星」の名称変更が実施されるなど、後の「きたぐに」誕生へ向けた布石が打たれた。
2.急行「きたぐに」の誕生
1968年10月1日のヨンサントオダイヤ改正では、大阪~青森間に寝台特急「日本海」が新設された。
これに伴い、それまで急行「日本海」として運転されていた列車は「きたぐに」へ改称され、新たな歴史を歩み始める。
「きたぐに」は寝台特急より料金が安く、北陸地方の主要駅にもこまめに停車することから、長距離利用だけでなく沿線利用者にも親しまれた。
3.客車急行時代
誕生当初の「きたぐに」は10系寝台車と12系座席車を組み合わせた客車急行として運転された。
1972年には北陸トンネル火災事故という悲惨な事故に遭遇する。
食堂車から発生した火災によって30名が犠牲となり、鉄道史上に残る大事故となった。この事故は車両の耐火構造や避難方法の見直しにつながり、その後の鉄道安全対策に大きな影響を与えている。
1973年には普通座席車を12系客車へ変更し、1978年には一般形客車のグリーン車連結を終了するなど、徐々に編成も変化していった。
4.上越新幹線開業と大阪~新潟間への変更
1982年11月15日の上越新幹線開業では夜行列車体系が大きく見直された。
「きたぐに」は新潟~青森間をエル特急「いなほ」に分離し、大阪~新潟間の運転となる。
同時に14系客車による寝台車・座席車混結編成となり、自動ドア化によって客扱い設備も近代化された。
大阪と新潟を結ぶ夜行急行として、新たな役割を担うことになる。
| 1982年11月15日ダイヤ改正現在夜行急行きたぐに編成表 | |||||||||||
| 夜行急行きたぐに | 大阪~新潟 | 14系寝台+14系座席 | 所属 | 宮原 | |||||||
| ←大阪 | 新潟→ | ||||||||||
| 郵便 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| スハフ14 | オハ14 | オハ14 | オハ14 | オハ14 | オハネ14 | オロネ14 | オハネ14 | オハネ14 | オハネ14 | スハフ14 | |
| 自由 | 自由 | 自由 | 自由 | 自由 | B★ | A | B★ | B★ | B★ | 指定 | |
| ※1 郵便車を連結。B★は3段式B寝台 | |||||||||||
| ※2 大阪~米原間はEF65-1000牽引、米原~新潟間はEF81牽引 | |||||||||||
5.583系寝台電車への転換
1985年3月14日のダイヤ改正では、「きたぐに」は583系寝台電車へ置き換えられた。
昼夜兼用の寝台電車である583系は寝台特急「月光」などで活躍してきた車両であり、「きたぐに」への投入によって運転効率が向上した。
当初は12両編成で運転され、翌1986年には10両編成へ変更された。
583系化以降は夜行列車でありながら北陸地区の都市間輸送としての役割も強まり、富山以東では通勤・通学利用も見られるようになった。
1988年からは新津~新潟間を快速列車として運転し、地域輸送にも貢献した。
6.唯一の夜行急行として活躍
1994年に寝台特急「つるぎ」が定期運転を終了し、1996年には完全廃止となる。
これにより「きたぐに」は京阪神と北陸・新潟を結ぶ唯一の夜行列車となった。
寝台特急「つるぎ」が速達輸送を担ったのに対し、「きたぐに」は敦賀・福井・金沢・高岡・富山・直江津など主要駅に停車し、地域密着型の夜行列車として利用された。
特に583系ならではの座席車・B寝台・グリーン車を備えた多彩な設備は、急行列車ならではの魅力でもあった。
7.定期運転終了と廃止
2000年代に入ると高速道路網の整備や航空機、新幹線との競争によって利用者は減少していく。
さらに新潟県中越地震、中越沖地震では長期間運休となるなど、災害にも見舞われた。
2007年には自由席禁煙化、2009年には座席車全面禁煙化が実施されたものの、利用低迷には歯止めがかからなかった。
2012年3月17日のダイヤ改正で定期列車としての運転を終了し、その後はゴールデンウィークなどに臨時列車として運転された。
しかし2013年1月を最後に運転設定が終了し、同月31日に正式な廃止が発表された。
8.まとめ
夜行急行「きたぐに」は、戦後の急行「日本海」を受け継ぎ、1968年から2013年まで活躍した関西と北陸・新潟を結ぶ代表的な夜行急行である。
客車時代から583系電車への転換、北陸トンネル火災事故、上越新幹線開業による運転区間短縮、「つるぎ」廃止後の唯一の夜行列車としての活躍など、その歴史は北陸本線夜行列車の変遷そのものだった。
特に583系による運転は「きたぐに」の最大の特徴であり、定期急行として最後まで583系が活躍した列車として鉄道史に名を残している。

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