1.概要
神戸電鉄粟生線の平日朝ラッシュ時ダイヤは、神戸市中心部方面への通勤・通学輸送を中心に設定されている。
かつての粟生線では急行や快速も運転されていたが、現在は準急と普通によるダイヤとなっている。準急は粟生線内では各駅に停車するため、粟生線内だけを見ると準急も普通と同じく各駅停車として機能している。
朝ラッシュ時の上り列車は粟生・小野・志染・押部谷などを始発として新開地方面へ向かい、鈴蘭台で有馬線・三田線方面からの列車と接続する。鈴蘭台では神戸市中心部方面への輸送を集約する役割を持っている。
一方、朝の下り方向についても、神戸市北区側から粟生線沿線へ向かう通勤・通学需要が存在する。特に鈴蘭台や西鈴蘭台方面から志染・三木・小野方面へ向かう流動は、上りほど大きくないものの、粟生線が単なる「神戸方面への片方向通勤路線」ではないことを示している。
2025年3月15日ダイヤ改正では、普通列車の一部を準急に変更するとともに、一部列車を減便した。朝ラッシュ時の輸送力を維持しながら、列車種別と運転本数を整理したダイヤとなっている。
2.2025年3月15日ダイヤ改正
2025年3月15日改正では、朝ラッシュ時間帯の粟生線上り列車について、普通列車の一部を準急へ変更するとともに、列車の削減も行われた。
主な変更は以下の通りである。
- 西鈴蘭台発6時48分の普通新開地行きを廃止
- 志染発7時03分の普通新開地行きを廃止
- 志染発7時34分の準急新開地行きを新設
- 西鈴蘭台発8時35分の普通新開地行きを廃止
この結果、単純な増発ではなく、普通列車の一部を準急へ振り替えながら、全体の運転本数を整理する形となった。
ただし粟生線内では準急も各駅に停車するため、沿線各駅から見れば「普通が準急になった」という種別変更の意味合いが強い。鈴蘭台以南では鵯越・丸山を通過することで、新開地方面への所要時間短縮を図っている。
3.上り朝ラッシュ――神戸方面への通勤・通学輸送
朝ラッシュ時の中心となるのが粟生線から新開地方面へ向かう上り列車である。
新開地着7時台には7本、8時台には5本が設定されている。
7時台には粟生・小野・志染・押部谷などを始発とする列車が設定され、8時台には粟生始発の準急が続く。
神鉄粟生線上り平日朝ラッシュ時ダイヤ
| 種別 | 始発駅 | 発車時刻 | 新開地着 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 準急 | 小野 | 5:03 | 6:02 | 普通→準急 |
| 普通 | 志染 | 5:39 | 6:22 | 準急→普通 |
| 準急 | 小野 | 5:47 | 6:46 | 13分繰り下げ |
| 準急 | 小野 | 6:01 | 7:01 | 普通→準急 |
| 準急 | 粟生 | 6:10 | 7:17 | |
| 準急 | 押部谷 | 6:52 | 7:26 | 普通→準急 |
| 普通 | 小野 | 6:31 | 7:33 | 準急→普通 |
| 普通 | 押部谷 | 7:10 | 7:48 | 鈴蘭台で特快速連絡 |
| 準急 | 粟生 | 6:40 | 7:52 | 準急→普通 |
| 準急 | 志染 | 7:15 | 7:58 | 11分繰り上げ |
| 普通 | 小野 | 7:05 | 8:08 | 鈴蘭台で特快速連絡 |
| 準急 | 志染 | 7:34 | 8:09 | 新設 |
| 普通 | 西鈴蘭台 | 8:05 | 8:24 | |
| 準急 | 粟生 | 7:17 | 8:31 | 普通→準急 |
| 準急 | 粟生 | 7:33 | 8:45 |
※上表は朝ラッシュの流れを把握するための主要列車を整理したもの。
粟生線では準急も各駅に停車するため、粟生・小野・三木・志染などから神戸方面へ向かう利用者にとって、準急化による駅停車の変化はない。
一方、鈴蘭台以南では鵯越・丸山を通過するため、普通列車よりも速達性が高い。
4.鈴蘭台で有馬線・三田線方面と接続
粟生線の朝ラッシュ時ダイヤを考えるうえで重要なのが鈴蘭台である。
粟生線からの列車は鈴蘭台で有馬線に接続し、新開地方面へ向かう。一方、有馬線・三田線方面から鈴蘭台へ到着した列車からも新開地方面への乗り継ぎが可能である。
特に朝ラッシュ時には、粟生線からの普通列車と有馬線系統の特快速を接続させるダイヤが設定されている。
記事中では、単に「鈴蘭台で接続する」とするよりも、
「粟生線単独で神戸方面への速達列車を増やすのではなく、鈴蘭台で有馬線・三田線系統と接続させることで神戸中心部への輸送を効率化している」
と説明した方が、神鉄全体のダイヤ構造が分かりやすい。
神鉄鈴蘭台駅は粟生線と有馬線の分岐駅であり、現在も駅情報や時刻表が公式に案内されている。
5.下り朝ラッシュ――粟生線沿線へ向かう通勤・通学輸送
朝ラッシュ時の粟生線では、上りの神戸方面行きが輸送の中心となる一方、下り方向にも一定の需要がある。
下り列車は、鈴蘭台・西鈴蘭台方面から志染・三木・小野など粟生線沿線の各地域へ向かう利用者を輸送する。
この流動には、沿線住民の通勤・通学だけでなく、学校や事業所などへのアクセスも含まれるため、朝の粟生線を「神戸方面への一方向輸送」として捉えるのは適切ではない。
特に三木・小野方面では、地域内の通勤・通学需要が存在するため、朝時間帯にも下り列車を確保する必要がある。
ただし、上りに比べると下りの利用者数は限定的であり、朝ラッシュ時のダイヤも上りほど高頻度には設定されていない。
このため粟生線の朝ラッシュは、
上り=神戸方面への広域通勤・通学輸送
下り=粟生線沿線内の通勤・通学を中心とした地域内輸送
という性格の違いを見ることができる。
また、下り列車は粟生線沿線から鈴蘭台方面へ向かう輸送だけでなく、鈴蘭台で有馬線・三田線方面と接続することで、神戸市北区と三木・小野方面を結ぶ地域間輸送としての役割も持っている。
| 神鉄粟生線上り平日朝ラッシュ時ダイヤ 2025年3月15日改正 | ||||||||
| 種別 | 始発 | 時刻 | 終着駅 | 時刻 | 所要時分 | 距離 | 表定速度 | 備考 |
| 普通 | 西鈴蘭台 | 5:06 | 新開地 | 5:24 | 0時間18分 | 9.2km | 30.7km/h | |
| 普通 | 三木 | 4:59 | 新開地 | 5:48 | 0時間49分 | 27.2km | 33.3km/h | |
| 準急 | 小野 | 5:03 | 新開地 | 6:02 | 0時間59分 | 34.1km | 34.7km/h | 普通→準急 |
| 普通 | 志染 | 5:39 | 新開地 | 6:22 | 0時間43分 | 23.5km | 32.8km/h | 準急→普通 |
| 普通 | 西鈴蘭台 | 6:17 | 新開地 | 6:37 | 0時間20分 | 9.2km | 27.6km/h | |
| 準急 | 小野 | 5:47 | 新開地 | 6:46 | 0時間59分 | 34.1km | 34.7km/h | 13分繰り下げ |
| 準急 | 小野 | 6:01 | 新開地 | 7:01 | 1時間00分 | 34.1km | 34.1km/h | 普通→準急 |
| 普通 | 西鈴蘭台 | 6:48 | 新開地 | 7:07 | 0時間19分 | 9.2km | 29.1km/h | 廃止 |
| 準急 | 粟生 | 6:10 | 新開地 | 7:17 | 1時間07分 | 37.1km | 33.2km/h | |
| 準急 | 押部谷 | 6:52 | 新開地 | 7:26 | 0時間34分 | 19.1km | 33.7km/h | 普通→準急 |
| 普通 | 小野 | 6:31 | 新開地 | 7:33 | 1時間02分 | 34.1km | 33km/h | 準急→普通 |
| 普通 | 押部谷 | 7:10 | 新開地 | 7:48 | 0時間38分 | 19.1km | 30.2km/h | 18分繰上げ・鈴蘭台で特快連絡 |
| 普通 | 志染 | 7:03 | 新開地 | 7:50 | 0時間47分 | 23.5km | 30km/h | 廃止 |
| 普通 | 粟生 | 6:40 | 新開地 | 7:52 | 1時間12分 | 37.1km | 30.9km/h | 準急→普通 |
| 準急 | 志染 | 7:15 | 新開地 | 7:58 | 0時間43分 | 23.5km | 32.8km/h | 11分繰上げ |
| 普通 | 小野 | 7:05 | 新開地 | 8:08 | 1時間03分 | 34.1km | 32.5km/h | 6分繰上げ・鈴蘭台で特快連絡 |
| 準急 | 志染 | 7:34 | 新開地 | 8:09 | 0時間35分 | 23.5km | 40.3km/h | 新設 |
| 普通 | 西鈴蘭台 | 8:05 | 新開地 | 8:24 | 0時間19分 | 9.2km | 29.1km/h | |
| 準急 | 粟生 | 7:17 | 新開地 | 8:31 | 1時間14分 | 37.1km | 30.1km/h | 普通→準急 |
| 準急 | 粟生 | 7:33 | 新開地 | 8:45 | 1時間12分 | 37.1km | 30.9km/h | |
| 普通 | 西鈴蘭台 | 8:35 | 新開地 | 8:55 | 0時間20分 | 9.2km | 27.6km/h | 廃止 |
6.粟生・小野・三木方面からの利用
粟生線の朝ラッシュを考える場合、始発駅の違いにも注目したい。
粟生線は粟生から小野、三木、志染、押部谷、西鈴蘭台を経て鈴蘭台へ至るため、列車の始発駅によって担う輸送範囲が異なる。
粟生始発列車は粟生線全線を走破して神戸方面へ向かう長距離通勤輸送を担う。一方、小野・志染・押部谷始発の列車は、沿線途中駅からの需要を取り込むことで、輸送力を補完している。
このように複数の始発駅を設定することで、全列車を粟生始発にするよりも、需要に応じた効率的な運転が可能となっている。
7.競合交通との関係
粟生線沿線から神戸市中心部へ向かう交通手段としては、神姫バスの特急バスも存在する。
小野、三木、恵比須などから神戸三宮方面へ向かうバスが設定されており、鉄道に対する競合交通となっている。
神鉄の場合、新開地で神戸高速線・阪神・阪急などへの乗り換えが必要になる。一方、神姫バスは神戸三宮へ直接乗り入れる系統があるため、目的地によって交通機関の使い分けが生じる。
したがって粟生線の朝ラッシュ時ダイヤでは、単純な列車本数だけでなく、
- 新開地での他社線への乗り継ぎ
- 鈴蘭台での有馬線・三田線との接続
- 神戸三宮方面へのアクセス
- 小野・三木など沿線地域内の通勤・通学輸送
を一体的に見る必要がある。
8.2025年3月改正で見える粟生線朝ラッシュの変化
2025年3月15日改正の特徴は、朝ラッシュ時の輸送力を単純に増やしたことではない。
普通列車の一部を準急へ変更し、運転本数も一部削減することで、運転体系を整理している。
粟生線内では準急も各駅停車であるため、利用者から見ると種別変更による影響は小さい。一方、鈴蘭台以南では鵯越・丸山を通過するため、新開地方面への速達性を高めることができる。
つまり今回の改正は、
「粟生線内の各駅停車としての輸送を維持しつつ、鈴蘭台以南で速達性を確保する」
という方向性が強い。
9.将来展望
神鉄粟生線ではワンマン運転などの合理化が進められている一方、神戸電鉄は2026年時点でも粟生線について、上下分離をはじめとする同線のコスト軽減策について関係者と協議するとしている。
したがって今後の粟生線については、単純に朝ラッシュ時の減便を進めるというより、
「現在の通勤・通学輸送をどの水準で維持するのか」
が重要なテーマとなる。
特に朝ラッシュ時の上り列車は、粟生・小野・三木・志染方面から神戸市中心部へ向かう利用者にとって重要である。また、鈴蘭台での有馬線・三田線との接続も神鉄ネットワーク全体の中で重要な役割を持つ。
一方、下り方向についても、沿線内の通勤・通学需要を支えるためには一定の輸送力が必要となる。
今後さらに利用者が減少した場合には、朝ラッシュ時の上り列車だけでなく、下り列車や昼間時間帯の輸送体系を含めて見直しが行われる可能性がある。
ただし、粟生線は単独で神戸市中心部への通勤路線というだけではなく、三木・小野地域と神戸市北区を結ぶ地域交通でもある。そのため、単純な利用者数だけでなく、沿線地域における交通ネットワークとしての役割を踏まえたダイヤ設定が求められる。
今後は、鈴蘭台での有馬線・三田線との接続を維持しながら、朝夕ラッシュ時の輸送力をどこまで確保するかが重要になるだろう。
10.まとめ
神鉄粟生線の平日朝ラッシュ時ダイヤは、神戸方面への通勤・通学輸送を中心としながら、沿線内の通勤・通学需要にも対応したダイヤとなっている。
2025年3月15日改正では、普通列車の一部を準急に変更し、運転本数を整理した。
粟生線内では準急も各駅に停車するため、沿線各駅から見ると普通列車と同じ役割を果たす。一方、鈴蘭台以南では鵯越・丸山を通過することで、新開地方面への速達性を確保している。
また、鈴蘭台では有馬線・三田線方面との接続が行われており、粟生線単独ではなく神鉄ネットワーク全体で朝ラッシュ輸送を形成している。
そして見落とせないのが下り方向の輸送である。
上りに比べれば規模は小さいものの、鈴蘭台・西鈴蘭台方面から志染・三木・小野方面へ向かう通勤・通学需要があり、粟生線は朝から一定の双方向輸送を行っている。
今後の粟生線では、上り朝ラッシュ時の神戸方面輸送だけでなく、下り方向を含めた地域内輸送をどのように維持していくかが重要な課題となる。



