1.概要
キハ187系は老朽化したキハ181系気動車の置き換えと、高速バスとの対抗策として山陰地区向けに2001年に導入された気動車特急用車両である。
JR西日本が新製投入した特急形気動車は1987年4月の同社発足以来本形式が初めてとなった。
基本設計はJR四国2000系を踏襲した(制御付)自然振り子式車両である。
2001年の山陰本線安来〜益田間の高速化事業によって新潟鐵工所で製造された0番台が投入され、2003年には山陰本線米子〜鳥取間・因美線鳥取〜智頭間の高速化事業によって日本車輌製造で製造された10・500番台が投入された。
0番台は島根県、10・500番台は鳥取県の資金援助を受けて製造された。
2002年には、鉄道友の会ローレル賞を受賞した。
会社名 | 西日本旅客鉄道 |
形式 | キハ187系 |
使用線区 | JR山陰本線・山口線・因美線 山陽本線・智頭急行 |
製造メーカー | 新潟トランシス |
所属 | 後藤総合車両所 |
編成 | 2両 |
既存両数 | 26両 |
車体 | ステンレス製 |
扉枚数・座席形状 | 20m級1扉回転式リクライニングシート |
動力伝達方式 | 液体式 |
機関 | コマツ製SA6D140H(450ps/2,100rpm) × 2基 |
変速機 | 液体変速機 DW21 |
変速段 | 変速1段・直結4段 |
ブレーキ | 機関ブレーキ・排気ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ |
台車 | 制御付自然振子装置組込円錐積層ゴム式 ボルスタレス台車(ヨーダンパ付) |
最高速度 | 120km/h |
加速度 | 2km/h/s |
減速度(通常) | 4.6km/h/s |
減速度(非常) | 5.2km/h/s |
製造初年 | 2010年 |
軌間 | 1067mm |
保安装置 | ATS-Sw, ATS-P EB装置・TE装置 |
座席定員 | キハ187-0番台・10番台 58名 キハ187-1000・1010番台 60名 キハ187-500番台 56名 キハ187-1500番台 56名 |
2.車体
車体はJR西日本の特急型車両では初となるステンレス構体を採用し、低重心化と軽量化が図られた。
カラーリングは、側面は優等列車に使用することを考慮し、窓周りは紺色とし、その上下黄色のラインが入れられている。
前面は高速運転を行うことを考慮し、下半分と貫通扉を黄色として警戒色としている。
プラグドアではなく通常の引き戸、連続窓ではなく独立した固定窓としてコストダウンを図っている。
3.主要機器
走行機関には小松製作所製SA6D140H(450ps/2,100rpm) が1両につき2基搭載されている。
各車両の動力軸は両台車の中央寄りの軸、計2軸となっている。
変速機は変速1段・直結4段の自動切替のDW21形を採用した。
ブレーキは機関ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用し、雪の多い区間を走行することから耐雪ブレーキも装備されている。基礎ブレーキは全軸踏面片押しブレーキとしており、滑走制御装置は搭載していない。
同時に投入されたキハ126系気動車とともに、運用保守の効率化を目的として電車と気動車のシステムや装置の共通化・標準化が図られ、部品点数も削減された。基本的な部品や機器は、同時期に製造された223系電車と共通化されている。
運転台は223系電車に準拠し、横軸ツインレバー型マスコン、緊急列車停止装置(EB装置)のほか、列車情報制御装置 (TICS) が搭載されている。
制御方式も223系などの同社の電車に準拠したものとなっており、TICSを用いた電気制御方式が採用されている。
冷暖房装置や制御装置、補助電源などの電力は、駆動エンジンと定速回転装置を介して接続した発電機で発電し供給する方式が採用されている。定速回転装置によってエンジンの回転数に関係なく一定の出力が得られるため、定常的に電力を供給できるようになっている。
警笛は221系電車などと同様の空気笛を装備している。なおミュージックホーンはない。
4.車内
座席は683系電車と同一のものが用いられ、部品の共通化によるコストダウンも図られている。
トイレは山陰本線上で下関向き車両のデッキにあり、車椅子対応、おむつ交換台付きとなった。洗面台はトイレ内に設置されている。
客用扉には半自動ボタンが設置されているが、営業運転においてドアの半自動扱いは行われていない。また、キハ126系0番台と共通のドアチャイムも設置されている。
5.各形式
キハ187形0番台・10番台 (Mc1)
新山口向き先頭車。
駆動エンジン・発電機・蓄電池のほか、バリアフリー対応洋式トイレが設置されている。
定員58名。
キハ187形1000番台・1010番台 (Mc2)
鳥取向き先頭車。
駆動エンジン・発電機・蓄電池のほか、喫煙スペースが設置されている。
定員60名。
キハ187形500番台 (Mc1′)
岡山・鳥取向き先頭車。
駆動エンジン・発電機・蓄電池のほかバリアフリー対応洋式トイレが設置されている。
定員56名。
キハ187形1500番台 (Mc3)
上郡向き先頭車。
駆動エンジン・発電機・蓄電池のほか、喫煙スペースが設置されている。
本系列では唯一、デッキと乗降ドアの位置が運転台側になっている。
定員56名。
6.番台区分
0番台
山陰本線米子〜益田間が2001年7月7日に高速化されたことにより、特急スーパーおき、スーパーくにびき(現在のスーパーまつかぜ)用として登場したグループ。同年に14両が新潟鐵工所で製造された。
山陰本線の高速化事業は、まず島根県側において県とJR西日本による共同事業として進められた。その内容は、曲線通過速度向上のための路盤改良およびPC枕木化、駅構内の一線スルー化による速度制限の撤廃などであり、これに合わせた車両として本系列およびキハ126系気動車が新たに投入された。
0番台は屋根上の冷房装置は1台搭載とされ、車体側面に島根県の花牡丹のイラストが貼付されている。
10番台
2003年10月1日のダイヤ改正にて山陰本線鳥取〜米子間が高速化されたことによる特急列車の増発用として製造されたグループで、0番台の改良形である。同年に4両が日本車輌製造で製造された。全車が米子支社後藤総合車両所に配置されている。
基本的な仕様は0番台と同一であるが、いくつかの改良が図られた。冷房装置はWAU707A形を1両あたり2台に増設(0番台はWAU707形1台)、排気管の騒音・振動低減対策、床の防音・防振対策、変速機への出力制限モードが追加されている。自動列車停止装置 (ATS) はSw形のみ設置されているが、P形対応のための準備工事がなされている。
客室では座席モケットの色が変更された。外観上では屋根上の冷房装置キセ(カバー)の数が2台になったほか、車体側面には鳥取県の花二十世紀梨の花のイラストが貼付されている。
500番台
因美線智頭〜鳥取間の高速化に伴う2003年10月1日のダイヤ改正で、特急いなばの高速化用として登場したグループ。同年に2次車として8両が日本車輌製造で製造され、後藤総合車両所へ配置された。スーパーまつかぜの増結に時折使用される。
10番台とほぼ同一の仕様だが、スーパーいなばの智頭急行線内での運行のためにATS-Sw形・P形の双方に対応している。ATS-P形の関連機器を室内に設置したことにより、定員が0・10番台と比べ少なくなっており、窓や客用扉、座席の配置も一部変更されている。
なお、本系列の前頭部は平らな切妻型のため、スーパーいなばでは智頭急行線内の単線トンネルの一部でトンネル微気圧波の軽減を図るためにトンネル進入時の速度を制限している。
2022年後藤総合車両所キハ187系編成表 | ||||
スーパーまつかぜ・スーパーおき | ||||
←新山口 | 米子→ | |||
1号車 | 2号車 | 製造年 | 製造 メーカ |
|
2両編成 | キハ187 | キハ187 | ||
1 | 1 | 1001 | 2001年 | 新潟鐵工所 |
2 | 2 | 1002 | 2001年 | 新潟鐵工所 |
3 | 3 | 1003 | 2001年 | 新潟鐵工所 |
4 | 4 | 1004 | 2001年 | 新潟鐵工所 |
5 | 5 | 1005 | 2001年 | 新潟鐵工所 |
6 | 6 | 1006 | 2001年 | 新潟鐵工所 |
7 | 7 | 1007 | 2001年 | 新潟鐵工所 |
2022年後藤総合車両所キハ187系編成表 | ||||
スーパーまつかぜ・スーパーおき | ||||
←新山口 | 米子→ | |||
1号車 | 2号車 | 製造年 | 製造 メーカ |
|
2両編成 | キハ187 | キハ187 | ||
11 | 11 | 1011 | 2003年 | 日本車輌 |
12 | 12 | 1012 | 2003年 | 日本車輌 |
2022年後藤総合車両所キハ187系編成表 | ||||
スーパーいなば | ||||
←岡山・鳥取 | 上郡→ | |||
1号車 | 2号車 | 製造年 | 製造 メーカ |
|
2両編成 | キハ187 | キハ187 | ||
51 | 501 | 1501 | 2003年 | 日本車輌 |
52 | 502 | 1502 | 2003年 | 日本車輌 |
53 | 503 | 1503 | 2003年 | 日本車輌 |
54 | 504 | 1504 | 2003年 | 日本車輌 |