阪急2300系【2代目は通勤型ではなく有料座席車PRiVACE付の特急車として登場】

2300F

2300F

1.概要

阪急2300系(2代)は2024年7月から営業運転を開始した京都線用の4M4Tの8両編成の特急用車両である。9300系の後継車となる特急用車両で、転換クロスシートを装備するが、9300系とは異なり、車端部は両側ともロングシートになった。阪急では初となる有料座席サービスPRiVACEを1両連結している。有料座席サービスPRiVACE1-2配列の回転式リクライニングシートになっている。

これまでの阪急京都線特急は料金不要のままクロスシートを装備するのが定番だったが、並行する京阪本線に有料座席プレミアムカーがデビューし、JR京都線でも新快速の一部に有料座席車Aシートが登場して、阪急京都線でも満を持して2300系で有料座席車を導入した。2300系は導入当初は1編成のみだったため、PRiVACEサービスを提供するため、PRiVACE車両のみを先行で製造し、既存の9300系の一部編成に連結して毎時2~3本の特急や準特急でPRiVACEサービスを提供した。

2350形「PRiVACE」車両は、2024年度グッドデザイン賞を受賞した。

2.車体

1000系のデザインを踏襲しつつ、疾走感を意識したデザインとし、前面窓に曲線が取り入れられた。フロント部は裾を絞った形になっており1000系とは違う外観になっている。阪急の車両では運転室直後にも座席が備えられてきたが、2300系では運転室直後の座席はなくなり、側窓もなくなった。先々代の6300系では運転室直後に座席はあったが、側窓はない構造だった。2300系は座席はないものの6300系に先祖返りしたような外観となった。

種別方向幕は一般車はLEDが採用され、「PRiVACE」車両ではガラス一体型の液晶ディスプレイ(LCD)を側面窓内に設けている。側面の種別方向幕は一定速度に達すると自動消灯する仕様となった。

外観塗装は阪急伝統のマルーンをベースに車体上部をアイボリーとした近年の阪急の標準仕様となっている。「PRiVACE」車両ではさらに裾部に金色の帯を配し、ドアの左右に「PRiVACE」のロゴが掲げられている。

一般車の扉は9300系と同じく3扉で、有料座席車「PRiVACE」車両では中央の両開き扉1か所のみとなった。「PRiVACE」車両の扉の窓はひし形になっている。「PRiVACE」車両の客室窓は座席1列にそれぞれ窓が付く小窓になっている。一般車両は車端部が2連、扉間が3連の連続窓になっている。車端部の2枚、中間部の両端の窓は開閉できる一段下降式窓となっている。

3.車内

一般車は扉間は転換クロスシートで、車端部は両側ともロングシートとなっている。9300系では車端部の片側は固定クロスシートになっており、扉側に補助椅子が設置されていたが、2300系では両側ともロングシートとなったため補助椅子はなくなった。各車両車端部には優先座席と車いすスペースが設けられている。前述したとおり運転席直後の座席はなくなり立席スペースと車いすスペースになっている。化粧板は木目調、シートモケットはゴールデンオリーブ色で阪急各車の伝統を踏襲している。車内ディスプレイは32インチハーフサイズのLCD表示器で、各ドア上に千鳥状に配置され各車両3基設置されている。客室内防犯カメラは各車両に3台ずつ設けている。

有料座席車「PRiVACE」車両は、2+1配列の回転リクライニングシート(座面スライド機構付き)を扉を挟んで7列ずつ設置している。扉を挟んだ2つの客室で2人掛け側と1人掛け側の左右が逆転する千鳥配置となっている。7列のうち各1列は1人掛け側の座席を省略し、一方の客室では車椅子スペース、もう一方の客室では荷物置き場としている。各座席には読書灯、コンセント、インアームテーブルが備えられている。枕部分および2人掛け席の肘掛け部にはパーテーションを備えている。客室内のモケットは一般車両と同様で、床面はカーペット敷きとなり化粧板の木目も一般車両とは異なる柄を採用し、鴨居部も木目調としている。デッキは床面も木目調で、壁面上部は大理石調とした。車内ディスプレイは32インチのLCD表示器で、客室・デッキ間の各ドア上に1つずつ、計4基を搭載している。

4.性能

電動車には定格出力190kWの主電動機を1両につき4台搭載し、うちM車はシングルアームパンタグラフ2台とVVVFインバータ制御装置を、M’車は静止型インバータ装置 (SIV) を装備している。台車は1300系と同様にS-579形を採用している。

補助電源装置には、東洋電機製造の容量180 kVA・供給電圧 交流440 VのSIVを採用した。また待機二重系や編成内SIVの並列運転により冗長性を確保している。

運転台はワンハンドル式で、モニタ装置を2つ搭載している。また1300系の車両情報統合システムから大きく機能を拡張させた車両制御システム (TCMS) を採用することで、同社で初めて制御転送指令(力行・ブレーキ等を伝送によって行うこと)を実現した。自動放送装置についても車掌台に設置のタッチパネル式の装置が廃止され、運転台上のモニタ装置に内蔵されている。

5.形式

先頭車Tcが2300形、2400形で、制御車で床下に電動空気圧縮機と蓄電池を搭載している。大阪梅田方が2300、京都河原町方が2400となる。

中間電動車Mのうちパンタグラフが付いた車両で2800形、2850形となっている。シングルアームパンタ2基を搭載する。床下にVVVFインバータ制御装置を搭載する。

中間電動車Mのうちパンタグラフがない車両で2900形、2950形となっている。床下に静止形インバータを搭載する。

中間付随車は2350形と2450形で、2350形は有料座席車PRiVACE車両となっている。

6.運用及び計画

2025年7月現在8両編成3本が稼働している。第4編成、第5編成となる2303F、2304Fも試運転を開始しており、近々に営業運転に就く見込みだ。将来的に12編成が導入され、京都線の特急車両は全て2300系での運転となる予定で、全ての特急に有料座席車PRiVACEも連結されることになる。

2300系本体とは別に有料座席車PRiVACE車両の2350形2356・2357・2358・2359・2360・2361の6両が先行で製造され、2024年度から9300系に連結されて運用を開始している。2300系が6編成になった時点で、12両のPRiVACE車両が出揃うので、その時点で全ての特急で有料座席車サービスを提供できることになるが、9300系の置換えや同車の通勤型車両への改造などを考慮すると全ての特急で有料座席車サービスを提供するのはもう少し2300系が増備されてからになりそうだ。

2300系は9300系とともに特急と準特急、通勤特急に運用されている。有料座席車PRiVACEを連結する列車に運用され、準急や普通に運用されることはない。

阪急2300系編成表 正雀車庫 30両      
←大阪梅田 京都河原町→    
1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車 7号車 8号車    
2300 2800 2900 2350 2450 2850 2950 2400    
Tc Mp M T T Mp M Tc 製造年月 製造メーカ
2300 2800 2900 2350 2450 2850 2950 2400 2024年7月 日立
2301 2801 2901 2351 2451 2851 2951 2401 2025年1月 日立
2302 2802 2902 2352 2452 2852 2952 2402 2025年3月 日立
2303 2803 2903 2353 2453 2853 2953 2403   日立
2304 2804 2904 2354 2454 2854 2954 2404   日立
2305 2805 2905 2355 2455 2855 2955 2405   日立
2306 2806 2906 2356 2456 2856 2956 2406   日立
2307 2807 2907 2357 2457 2857 2957 2407   日立
2308 2808 2908 2358 2458 2858 2958 2408   日立
2309 2809 2909 2359 2459 2859 2959 2409   日立
2310 2810 2910 2360 2460 2860 2960 2410   日立
2311 2811 2911 2361 2461 2861 2961 2411   日立
※4号車2350は有料座席車PRiVACE

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