阪堺電気軌道阪堺線ガイド

353形と504形

353形と504形

1.概要

阪堺電気軌道阪堺線は恵美須町と浜寺公園を結ぶ14.1㎞の軌道路線である。路面電車ではあるが、その名の通り大阪と堺を結ぶ都市間電車が発祥で、併用軌道よりも専用軌道の方が多いのが特徴である。恵美須町では大阪市交堺筋線と連絡、南霞町では同駅に隣接する新今宮でJR大和路線とJR大阪環状線に連絡し、さらにこの付近にある動物園前駅で大阪市交御堂筋線と堺筋線と連絡している。住吉では阪堺電気軌道上町線と接続、直通している。住吉鳥居前では南海本線の住吉大社と連絡、浜寺駅前でも少し離れているが、南海本線と連絡している。

2.路線ガイド

阪堺線は恵美須町から浜寺駅前に至る路線で全線複線となっている。恵美須町は国道25号線の南側に面したところにあり、地下を走る地下鉄堺筋線の一番南側の出口と直結している。駅構内は3面2線でターミナル構造になっていたが、2020年2月1日からバリアフリー改造によりホーム1面1線となった。以前はよく言えばレトロな雰囲気、悪く言えば寂れた雰囲気の停留所だったが、リニューアル改造によりその雰囲気も薄れた。北側には日本橋の電気街が広がり、東側には通天閣とその周囲には新世界の街が広がっている。ディープ大阪を堪能できる町が周辺にある。

恵美須町を出ると専用軌道を真っすぐ南下して行く。JR大和路線、大阪環状線の高架をくぐって新今宮駅前となる。JR新今宮駅東口と連絡しており、地下には地下鉄御堂筋線、堺筋線の動物園前駅があり連絡している。南海新今宮駅は西側にずれているため、乗り換えるには少し遠い。2014年12月1日に南霞町から新今宮駅前に改称された。

新今宮駅前からさらに真っすぐ南下して行き今池となる。以前は同駅で南海天王寺支線と連絡していたが、同線は廃止されてしまった。その跡を流用して地下鉄堺筋線が天下茶屋まで延伸されているが、堺筋線は今池には駅を造らなかった。さらに遡って1980年11月までは南海平野線が同駅から出ており、今池から恵美須町まで同線電車が乗り入れていた。今でも南海平野線との接続跡は残っている。今池の西側には少し離れているが、南海高野線の萩ノ茶屋駅がある。さらに真っすぐ南下して今船、松田町、北天下茶屋と専用軌道を走る。堺までの都市間輸送を考えて造られた路線だけに線路はほぼ真っすぐで線形はいい。

聖天坂を過ぎると緩やかに右にカーブして天神ノ森を過ぎて、南海高野線と同線岸里玉出駅付近で交差して、その交点を過ぎてから併用軌道に入る。恵美須町からここまでは専用軌道を走る。併用軌道に入って東玉出となる。この付近の道路は非常に狭く、片側車線は明らかに軌道上を走ることを前提としている。このため電車が走らない時はクルマがバンバン走っており、電車の運行にも支障をきたすし、車の方も運転がしにくい。塚西、東粉浜と南下していくが、道路は狭いままだ。西側には南海本線が並行して走り、東粉浜は同線粉浜と乗り換えが可能だ。

さらに真っすぐ併用軌道を南下していくと住吉で、下り電停の向こう側で上町線と平面交差する。上町線とは交差だけではなく、連絡線もあり、同線から我孫子道まで終日直通運転が行われている。かつては上町線は住吉から住吉公園まで線路があったが、2016年1月31日に廃止された。上町線との交点を越えて少し走って住吉鳥居前となる。ここはすみよっさんと呼ばれる住吉大社への最寄で、電停の目の前が住吉大社の鳥居となっているため、このような電停名となっている。同電停の西側には南海本線住吉大社駅があり、以前はその高架下に上町線住吉公園の駅があった。住吉大社は大阪で一番初詣の参拝が多い神社で正月三箇日などには阪堺線も賑わう。

住吉鳥居前を過ぎると少し併用軌道を走ってから、左にカーブして専用軌道に入る。S字にカーブして細江川を渡って細井川となる。国道479号線と交差して、真っすぐ南下して行き、安立町を過ぎてさらに真っすぐ南下して我孫子道となる。このあたりも恵美須町からの専用軌道同様線形は非常に良い。我孫子道は阪堺電気軌道の拠点で本社があり、南側には車庫を併設している。停留所は2面2線で、南側に車庫がある為、上下間の渡り線があり、下り線には南側にも車庫への渡り線があり、そこで我孫子道折り返し電車は折り返し作業を行っている。上町線電車は全て我孫子道で折り返していたが、現在は上町線電車が浜寺駅前まで直通し、阪堺線電車が我孫子道で折り返している。ここから大和川を渡るまでが大阪市内で、運転上は我孫子道までが大阪市内扱いとなり、運賃は市内均一の200円に設定されている。

大和川を渡り、堺市に入りすぐに2面2線の大和川となる。大阪市内と堺市内は200円均一となっているが、大阪市と堺市に跨る乗車は290円となる。我孫子道~大和川間は1駅区間のため200円に設定されているようだが、我孫子道の隣の安立町~大和川間は290円の設定となっている。大和川の築堤から下りて阪神高速15号堺線と交差してしばらく走って高須神社となる。さらに真っすぐ南下して行き、S字カーブをして綾ノ町を過ぎて併用軌道に入る。ここからの併用軌道は大阪市内の併用軌道と違い、道路が広く真ん中に軌道が敷かれており、信号待ち以外で走行を邪魔されることは少ない。

ここからも真っすぐ西向きに走り、神明町、妙国寺前、花田口、大小路と過ぎて、堺市のメインストリート国道26号線フェニックス通りとの交点に宿院がある。通りには面していないが海側を向いていくと南海本線堺駅があり、山側に向いていくと南海高野線堺東駅がある。以前このあたりににLRTを走らせる計画があったが、財政難などにより計画はなくなった。フェニックス通りも道幅が広く余裕があるのでLRTを走らせることも十分可能と思われる。堺市内の道は広く整備されており、車を走らせる方から見ると走りやすいところだ。その分鉄道にとっては利用が少なくなるということも言える。

寺池町、御陵前と過ぎて、併用軌道から再び専用軌道に入る。専用軌道に入ると大阪市内同様線形が非常によくなる。また、堺市内は大阪市内よりも駅間距離が長いので結構速度を出して走る。もっとも速いというわけではなく、線路整備がいまいちということもあって速さよりも揺れが大きく体感速度が高いというのが妥当なところだ。海側に南海本線が並行して走っているが、少し離れており、競合関係にあるというわけでもない。東湊、石津と南海本線の湊、石津川とは微妙に駅の位置をずらして配置されており、この辺りは系列会社としてうまく駅が配置されている。2015年2月1日に東湊〜石津間に石津北が新設された。阪堺線では35年ぶりの新設電停となった。

石津川を渡ってしばらく走って船尾を過ぎたあたりから南海本線と近づいて、阪堺線が築堤を上がって、南海本線をアンダーパスして、地上に下りて、右手に浜寺公園を見て浜寺駅前に着く。停留所は1線になっており、乗車専用になっており、降車は停留所手前の複線区間で行われる。降車用の停留所でしばらく止まって、先行電車の出発を待ち、先行電車が出た後に入線して客扱いを行う。浜寺公園への最寄駅で、目の前が浜寺公園となっている。また、浜寺駅前の名の通り、東側には南海本線の浜寺公園駅があり連絡している。

3.歴史

阪堺線は1911年(明治44年)12月1日に阪堺電気軌道が恵美須町~市ノ町(現在の大小路)間が開業した。1912年(明治45年)
3月5日に市ノ町~少林寺橋(現在の御陵前)間が開業した。同年4月1日に少林寺橋~浜寺間が開業した。

1912年(大正元年)11月30日に浜寺~浜寺公園間が開業した。これにより浜寺停留場が廃止された。1913年(大正2年)頃に浜寺駅前停留場が開業した。
1915年(大正4年)6月21日に南海鉄道に合併され同社の路線となった。1916年(大正5年)12月22日に浜寺駅前~浜寺公園間が休止になった。1917年(大正6年)3月15日に浜寺駅前 ~浜寺公園間が廃止された。

1944年(昭和19年)に宮ノ下・海道畑の停留場が廃止、住吉鳥居前・細井川・花田口・寺地町の各停留場が休止された。同年6月1日に関西急行鉄道と南海鉄道が合併して近畿日本鉄道が成立。同社天王寺営業局の所属となった。1947年(昭和22年)6月1日に旧・南海鉄道の路線を南海電気鉄道に分離譲渡。同社大阪軌道線の一路線となった。1952年(昭和27年)までの間で花田口停留場が再開された。1955年(昭和30年)3月30日に住吉鳥居前・細井川・大和川・寺地町の各停留場が再開された。

1957年(昭和32年)に大道筋の拡張完成により、綾ノ町~御陵前の軌道が移設され、現在の軌道・電停位置になった。1980年(昭和55年)
11月28日に平野線廃止に伴い今船停留場が開業した。同年12月1日に上町線とともに阪堺電気軌道に分離譲渡された。1990年(平成2年)10月4日に釜ヶ崎で発生した暴動により南霞町停留場(現在の新今宮駅前停留場)駅舎が放火され、5日まで阪堺線が運休。同駅舎は後に北に移設され仮設営業開始(そのまま元の位置に戻ることなく本営業になり、現在に至る)。

2009年(平成21年)7月4日ダイヤ改正で、朝夕の一部を除き、恵美須町~我孫子道~浜寺駅前間通し運転が中止となった。恵美須町~我孫子道間および天王寺駅前 ~我孫子道~浜寺駅前間の運転系統に再編された。2013年(平成25年)2月2日ダイヤ改正で、朝夕に残されていた恵美須町~我孫子道~浜寺駅前間通し運転が中止となった。恵美須町発着電車は全て我孫子道止まりになった。

2014年(平成26年)12月1日に南霞町を新今宮駅前に改称した。2015年(平成27年)2月1日に石津北停留場が開業した。2016年(平成28年)1月31日に宿院停留場の上下の乗り場がそれぞれ道路を挟んだ向かい側に移設された。2020年(令和2年)2月1日に恵美須町停留場を南側に約100m移設された。恵美須町停留場に副駅名〈通天閣前〉を、新今宮駅前停留場に副駅名〈新世界前〉が追加された。

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