近鉄吉野線ガイド【あの千本桜でも有名な吉野山へ向かう観光路線】

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1.概要

会社名 近畿日本鉄道
路線名 吉野線
区間 橿原神宮前~吉野
営業キロ 25.2km
駅数 17駅
平均駅間距離 1.58km
所要時分 37分
表定速度 40.9km/h
軌間 1067mm
電気方式 1500V直流
線路 単線
保安方式 ATS
最高速度 100km/h
最大編成両数 4両

近鉄吉野線は奈良県橿原市の橿原神宮前と同吉野町の吉野を結ぶ25.2kmの路線で、千本桜などで有名な吉野山への観光輸送を行う路線である。有名観光地が控えることもあり、特急が毎時1~2本運転され、橿原神宮前から先南大阪線に乗り入れ、大阪阿部野橋まで運転されている。線内各駅に停まる急行も橿原神宮前から先南大阪線に直通している。

駅番号 駅名 駅間キロ 営業キロ 準急 急行 快速急行 所在地 開業年月日
F42 橿原神宮前 0km 奈良県橿原市 1923/3/21
F43 岡寺 1.1km 1.1km 奈良県橿原市 1923/12/5
F44 飛鳥 1.1km 2.2km 奈良県高市郡明日香村 1929/3/31
F45 壺阪山 1.7km 3.9km 奈良県高市郡高取町 1923/12/5
F46 市尾 2.1km 6km 奈良県高市郡高取町 1923/12/5
F47 1.9km 7.9km 奈良県御所市 1923/12/5
F48 吉野口 1.6km 9.5km 奈良県御所市 1912/10/12
F49 薬水 1.7km 11.2km 奈良県吉野郡大淀町 1924/2/7
F50 福神 1.6km 12.8km 奈良県吉野郡大淀町 1924/5/11
F51 大阿太 1.8km 14.6km 奈良県吉野郡大淀町 1929/3/31
F52 下市口 2.4km 17km 奈良県吉野郡大淀町 1912/10/25
F53 越部 1.7km 18.7km 奈良県吉野郡大淀町 1927/7/1
F54 六田 2km 20.7km 奈良県吉野郡大淀町 1912/10/25
F55 大和上市 2.2km 22.9km 奈良県吉野郡吉野町 1928/3/25
F56 吉野神宮 0.8km 23.7km 奈良県吉野郡吉野町 1928/3/25
F57 吉野 1.5km 25.2km 奈良県吉野郡吉野町 1928/3/25

2.歴史

近鉄吉野線は1912年(大正元年)10月25日に吉野軽便鉄道として吉野口~吉野(現在の六田)間が開業した。1913年(大正2年)5月31日に吉野鉄道に社名が変された。1923年(大正12年)12月5日に(旧)橿原神宮前~吉野口間が開業した。全線電化され、橿原神宮前では大軌畝傍線(現在の近鉄橿原線)と連絡した。1924年(大正13年)2月7日に薬水駅が開業した。同年5月11日に福神駅が開業した。同年11月1日に畝傍~(旧)橿原神宮前駅間が開業した。1927年(昭和2年)7月1日に越部駅が開業した。1928年(昭和3年)3月25日に六田~吉野間が開業した。これにより全線が開通した。これまでの吉野駅を六田駅に改称した。同年10月15日に畝傍~(旧)橿原神宮前間に小房駅が開業した。

1929年(昭和4年)3月29日に久米寺駅(現在の橿原神宮前駅)が開業した。この日同駅まで開業した大阪鉄道(現在の近鉄南大阪線)との直通運転を開始した。同年3月31日に橘寺駅・大阿太駅が開業した。同年8月1日に大阪電気軌道が吉野鉄道を合併し、畝傍~吉野間は同社吉野線となった。1930年(昭和5年)7月10日に(旧)橿原神宮前~久米寺間を三線軌条化し、畝傍線の電車が乗り入れを開始した。1939年(昭和14年)3月1日に小房~(旧)橿原神宮前間を廃止し、小房~橿原神宮駅駅(現在の橿原神宮前駅)間の新線が開業した。同年7月28日に(旧)橿原神宮前~久米寺間が廃止された。

1940年(昭和15年)4月1日に久米寺駅が橿原神宮駅駅に統合された。1941年(昭和16年)6月に畝傍~橿原神宮駅(現在の橿原神宮前駅)間を小房線と改称した。1945年(昭和20年)6月1日に小房線の旅客営業を休止した。1950年(昭和25年)7月1日に小房線が休止した。1952年(昭和27年)9月1日に小房線が廃止された。

1965年(昭和40年)3月18日に大阪阿部野橋~吉野間に特急の運転を開始した。1968年(昭和43年)9月26日から自動列車停止装置 (ATS) の使用を開始した。1970年(昭和45年)3月1日に橿原神宮駅駅を橿原神宮前駅に改称した。同年8月1日に橘寺駅を飛鳥駅に改称した。1984年(昭和59年)2月1日に貨物営業を廃止した。

1989年(平成元年)5月18日に特急の停車駅に吉野口駅を追加した。1990年(平成2年)3月15日ダイヤ変更から26000系(さくらライナー)の営業運転を開始した。吉野特急の30分間隔運転を開始した。特急の停車駅に飛鳥駅・壺阪山駅を追加した。1996年(平成8年)6月1日から16400系 (ACE) の営業運転を開始した。同年10月4日に橿原神宮前~吉野口間で一部列車のワンマン運転を開始した。

1998年(平成10年)3月17日に飛鳥駅が単線ホームから2面2線の列車交換可能駅となり、岡寺駅での2列車対向待ちが解消された。1999年(平成11年)3月16日ダイヤ変更で特急の停車駅に福神駅・六田駅を追加した。大阪阿部野橋駅から吉野線内各駅への特急料金を距離に関わらず500円に値下げした。2001年(平成13年)2月1日から橿原神宮前駅における「途中下車指定駅」の制度が廃止された。同年9月1日から列車運行管理システム(吉野線CTC)の稼動を開始した。

2007年(平成19年)4月1日から各駅でICカードPiTaPa・ICOCAの利用が可能になった。2010年(平成22年)6月19日から16600系 (Ace) が営業運転を開始した。2011年(平成23年)10月1日から市尾駅・葛駅・大阿太駅・越部駅の4駅が終日無人駅となった。2012年(平成24年)12月21日から岡寺駅が終日無人駅となった。これにより、線内の特急通過駅は全て無人駅となった。

2016年(平成28年)9月10日から16200系による観光特急「青の交響曲」が運転を開始した。2021年(令和3年)1月6日から特急停車駅である飛鳥駅・福神駅・大和上市駅・吉野神宮駅の4駅が無人駅となった。同年7月3日ダイヤ変更で、昼間時の急行が区間急行に置き換えられ、平日の一部列車は2両編成の普通に置き換えられた。特急は毎時1本の運転となる時間帯が増加した。

3.路線ガイド

橿原神宮前では南大阪線とスルー構造になっており、吉野線電車は下りが4・5番線、上りが6・7番線から発着している。吉野線線内の普通は4・5番線からの発着となっている。連絡通路を介して橿原線と連絡しており、同線には吉野連絡の特急が京都から運転されている。橿原神宮駅構内は右にカーブしているが、同駅を出てからも右にカーブして、左手から標準軌の橿原線の線路が近づいてきて、台車交換場などを見ながらそれが途切れて、吉野線は単線になって南下して行く。岡寺は2面2線の交換駅となっている。吉野線内では急行以下の種別が全て各駅に停車するので、同駅にも急行が停車する。自動改札は未設置で、PITAPAなどのICカードの間に読み取り機が設置されている。上り勾配を走り、橿原市の市街地から離れていく。飛鳥も2面2線の交換駅で、同駅も岡寺駅同様自動改札の設置はなく、ICカードの読み取り機がある。1990年3月改正から特急停車駅となっている。駅の南東側には高松塚古墳があり、その他にも万葉の歴史に触れられる所が多く、駅にはレンタサイクルが置かれている。

高取町に入ってしばらく走り2面3線の壺阪山となる。普通電車の一部が当駅で折り返すため、折り返し用の副本線がある。ここも1990年3月改正から特急停車駅となっている。ここまでの駅にはスルッとKANSAIカードやJスルーカードに対応した券売機と精算機が置かれているが、ここから先は基本的にカード利用には対応していないので、スルッとKANSAIが発売している3DAYチケットや2DAYチケットは吉野線では当駅までの利用となっている。この種のカードは路線バスなどでは運転手に乗車日付を見せることで乗車できるようになっているが、吉野線でもこの手法を用いれば利用できるようになる。壺阪山まででは中途半端なので終点の吉野まで3DAYチケットが利用できるようになれば便利だ。

臨時快速急行吉野

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壺阪山を出ると右にカーブして進路を西に向ける。市尾は2面2線の交換駅で、急行以下の列車が停車する。市尾を出ると曽我川の向こうにJR和歌山線が走っているが、よくは確認できない。御所市に入ってすぐに1面1線の葛となる。ここも急行以下のみの停車となっており特急は通過する。JR和歌山線が右手に並行して走るようになり、しばらく走り3面5線の吉野口となる。近鉄が2面2線、JRが2面3線を使用している。駅舎はJRが管理しており、自動改札はないが、ICカードの読み取り機があり、近鉄利用時のみICカードの利用が可能となっている。JRは高田以南ではICカードの利用ができないが、近鉄のように簡易読み取り機を普及させて利用可能駅を増やして欲しいものだ。吉野口は特急停車駅で、特急や急行が行き違い待ちのため数分停車することもある。駅名から吉野山に近い感じがするが、実際にはかなり離れており、あくまでも吉野へ向かう入口の地点という意味の駅名になっている。ここで降りても吉野観光をすることはできない。

吉野口を出ると少しJRと並行して走り、吉野線が左に、和歌山線が右にカーブして一旦離れるが、薬水付近で再び近づく。薬水は1面1線で、急行以下のみが停まる駅となっている。JR和歌山線が近くを走っているが、駅はなく連絡はしていない。薬水から大淀町に入り、本格的な山登りが始まる。福神は2面2線の特急停車駅で、駅南側にある住宅地の開発に合わせて99年3月の改正から特急が停まるようになっている。立派な橋上駅舎を持つが、自動改札はなく、簡易ICカード読み取り機があるだけだ。

福神を出ると大阿太トンネルに入り、同トンネルを抜けると2面2線で行き違い可能な大阿太となる。同駅は山間の小駅の印象があり、この周辺は南海高野線と似たような雰囲気がある。もっとも吉野線は高野線ほど急曲線、急勾配が続くわけではない。それでも曲線や勾配は平坦線よりもきつく、列車速度はあまり上がらない。山から平地に下りる形で街に入り、2面3線の下市口となる。大淀町の中心駅で特急停車駅となっており、これまでの駅と比べて飛び抜けて利用者が多い。

下市口からは吉野川に沿って走る。越部は2面2線で急行以下が停車する駅となっている。次の六田は特急停車駅で、2面2線の交換駅となっている。駅北側に北野台団地があり利用者はそれなりに多い。吉野側に六田車庫があり、朝晩には同駅折り返しの電車の設定もある。

六田からは川から少し離れて山の中に入り、吉野町に入ってトンネルを抜けると1面1線の大和上市となる。吉野町役場の最寄駅となっており、以前からの特急停車駅となっている。大和上市を出ると吉野川橋梁で吉野川を渡る。同橋梁は吉野線撮影のメッカと言え、鉄橋を渡るさくらライナーなどの写真が雑誌を飾ったりしている。吉野川を渡り終えると2面2線の吉野神宮となる。この駅も以前からの特急停車駅となっている。その名の通り吉野神宮への最寄駅となっている。ここから少し勾配を上り、終点の吉野に着く。吉野は3面4線のターミナル構造の駅で、改札寄りのホームは駅舎の屋根で覆われている。2番線から特急、3番線から急行が発着しており、通常は1・4番線は使用されていない。駅周辺に住宅は少なく、吉野山方面への観光行楽客の利用が大半を占めている。駅前には茶店や土産物屋が並び、駅から少し歩くと吉野ロープウエイの千本口駅があり、ここから吉野山に上がることができる。

 

  

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